分譲マンション(一室)の評価方法が変わりました
経緯
相続税法では、相続財産等の評価は「時価」によるとされていますが、不動産などは「時価」の把握が困難です。
このような財産については「財産評価基本通達」で評価方法が公開され、税務当局や納税者はその規定に基づき評価を行っています。
しかしながら、分譲マンション(一室)(特にタワーマンション)の評価額は、時価(市場価格)よりずいぶんと安い価格となっていました。
国税庁の資料によると全国平均の乖離率(市場価格÷評価額)は2.34倍で、これは評価額が市場価額の42.7%に過ぎないことを意味しています。
一方、戸建て住宅の乖離率1.66倍で、60.2%です。
これは、戸建て住宅に比べてマンションの評価が割安になっていることを示しています。
このことは、数年前から問題視されていましたが、令和4年の最高裁判決をきっかけとして、
令和5年9月28日に国税庁は「居住用の区分所有財産の評価について」という法令解釈通達を公表し、
相続税評価額と時価との乖離を小さくする(評価額を時価に近づける)方向での評価方法を示しました。
この新しい評価方法は、令和6年1月1日以後の相続、遺贈または贈与に適用されます。
新しい評価方法
(1)対象
新しい評価の対象となる不動産は、区分所有登記がされた不動産で居住用専有部分があるものとされていますので、
一般的な分譲マンション(一室)が、対象となります。タワーマンションに限定されたものではありません。
また、2階建ての集合住宅、二世帯住宅、事業用テナント物件の一室や区分所有でない一棟所有のマンションなどは対象外となります(従来の評価のままです)。
(2)評価方法
評価方法は、従来の評価方法で求めた評価額に「区分所有補正率」を掛けて計算します。
土地(敷地利用権) |
従来の評価額(敷地全体の評価額×敷地権割合)×「区分所有補正率」 |
建物(区分所有権) |
従来の評価額(固定資産税評価額×1.0)×「区分所有補正率」 |
「区分所有補正率」は、①評価水準が1を超える場合は、区分所有補正率=評価乖離率
②評価水準が0.6未満の場合は、区分所有補正率=評価乖離率×0.6
③評価水準が0.6以上1以下の場合は、区分所有補正率=1 で求めます。
「評価乖離率」は、マンションの築年数、総階数、部屋の所在階、敷地持分狭小度をもとに求めます。
計算式は、以下のとおりですが、国税庁ホームページに計算ツールが掲載されています。
「居住用の区分所有財産に係る区分所有補正率の計算明細書」(計算ツール)
(3)今後の対応等について(タワマン節税が有効か)
今回の変更により、従来から相続税対策として有効とされたタワーマンションの現金購入や借入金での購入による節税効果が薄れたことには違いありませんが、時価との乖離率が、戸建て住宅並みに引き下げられた程度に過ぎず、時価の60%程度で評価できることは、不動産が相続税対策としては有効であることに変わりないかと思われます。
評価乖離率の指数は、3年ごとに見直されることが予定されているようですが、今回の指数は、平成30年の分譲マンションの売買実例価額等をもとに組み立てられているため、平成31年以降の市場価格の上昇は、反映されていません。
よって、マンション価格が高騰している東京都心部のタワーマンションなどでは、現時点でも時価の60%未満での評価となるケースもあると見込まれます。
(タワー)マンションの一室を購入し賃貸用とした場合、土地部分は貸家建付地、建物部分は貸家としての評価となりますので、自己の居住用とした場合より低い価額で評価できますし、小規模宅地等の特例(貸付事業用)を適用することで、土地部分の評価減ができます。(不動産を活用した相続税対策については、弊所コラム「不動産は本当に節税?」(2024.1.31)をご参照ください。)
現在のようなマンション市場価値が高騰している状況にあっては、節税よりも価格下落(暴落)リスクを考えておく必要はあるかと考えます。
まとめ
不動産を利用した相続税の節税対策は、一定の効果が期待できる一方で、全ての方にとって有効とは限りません。
今回解説したメリットとデメリットを十分に理解し、ご自身の状況や将来設計に合わせて慎重に検討することが大切です。
専門家である税理士に相談し、最適な相続対策を講じることをお勧めします。
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